何のためのホームステイ?
ある生徒さんのお宅に、今イギリスからの交換留学生がホームステイをしているということで、そのお宅のお母さんにお話を伺いました。
結論から言うと、ちょっと苦労されているそうです。
まずは食事。彼は好き嫌いが多く、出した食事に全く手を付けないこともあるのだとか。特に野菜はほとんど食べないそうです。朝持たせるお弁当も残っていることが多かったり、帰宅後お弁当箱を黙って差し出すのが、「ちょっとね、解らない」と言っておられました。
また、何か家のお手伝いを申し出たり、積極的に家族と交流したりということもなく、自室にこもってスマホで電話したり、動画を観たりしているということでした。
「今はそれができてしまうからね。」
固定電話しかない時代には、電話を使いたいとお願いするしかなかったし、自室にいてもやることがないからホストファミリーと一緒にテレビを観たりして過ごす中で、自然にコミュニケーションも生まれていました。
今では、一人で食事をしている人はともかく、家族で外食していても、それぞれがスマホの画面を見て話もしないという風景が珍しくなくなりました。自分の家族でもそうなのですから、気兼ねする異国のホストファミリーとだったらなおさら、一人で気ままに時間が潰せる道具に逃げたくなるのかもしれません。
もう20年以上前、私が初めてホームステイをしたときは、お客としてではなく家族として迎え入れてくれるのだから、自分も家族として積極的に手伝いをしたり会話したりしなさいと言ってくれる人がいました。また、ホームステイとは関係なく、よそで出されたものはたとえ口に合わなくても、ありがたくいただきなさいと親に言われて育ってきた日本人は多いと思います。自分自身も、せっかく外国の生活が体験できるチャンスだから、たくさん見て、聞いて、吸収しようと貪欲でした。
件の留学生がどういう経緯で日本に来ているのかはわかりません。まだ14・5歳で、もしかしたら本人は来たくなかったのに、親に無理やり行かされたのかもしれません。内気な性格の子もいるし、例えば家での手伝いひとつとってもそれぞれのご家庭の方針もあるでしょう。手伝いはしなくてもいいから勉強しなさいと言われて育ってきているのかもしれません。
それでも。
やっぱりもったいないと私は感じてしまいます。人生で最も多感な時期に、異文化に触れられるせっかくのチャンスをみすみす逃すのは本当にもったいないです。
教室の生徒さんの中にも、短期のホームステイや中学や高校の研修旅行で外国に行く子が毎年います。「日本にいてもできるようなことはするな!そこに行かなければ見られないもの、できないことをしてきなさい!」と檄を飛ばして送り出したいです。
2016年10月27日